鑑別書の特別呼称について。選ぶべき宝石の基準とは?

昭和、平成、令和と時代が進むにつれて確かな宝石へのニーズの高まりから鑑別書の発行数も増えてきています。

その検査項目は数多く、天然石や合成石の判断を基本としてその宝石にどんな処理が施されているのか、

どんな場所で産出したものなのかを鑑別機関がそれぞれの基準を持って精査しているのですが、

その中で宝石に対し特別な呼称を付けることがあります。

今回は当店が取り扱った宝石たちの特別な呼称をご紹介いたします。

 ロイヤルブルーカラー

上質なサファイアの代名詞とも言えるのがロイヤルブルーカラー。

イギリス王室の愛する色合いとして有名であり、

一般的なサファイアよりもさらに深みのある色合いで僅かな紫を含んだ力強い発色が特徴です。

 GIA

GIAのロイヤルブルーカラーはかなり深い色合いでなければ取得できません。

皆様が思うよりもさらに一段階深いかと思います。

光源によっては真っ暗に感じることがあるものもありますので、当店では色合いの鮮やかさとお客様のお好みに合わせてご案内しております。

 AIGS

宝石の集積地、タイで最も有名な鑑別機関が発行するロイヤルブルーカラーは

GIAに比べてやや明るいものでも記載されていることがあります。

 GRS

スイスの鑑別機関、GRSでもロイヤルブルーカラーの記載をしています。

GIAに比べ透明度よりも純粋に色合いを見て判断している印象を受けます。

 コーンフラワーブルーカラー

カシミール産の上質なサファイアに見られる鮮やかで矢車草のような中濃度から濃い青色であり、ベルベティで柔らかな質感を思わせる美しさが語源とされています。

現在ではロイヤルブルーよりは明るく、純粋な青色や明確な紫を帯びたサファイアを指すことがあります。

また、カシミール産のサファイアに似たサファイアをカシミールタッチ、カシミアタッチと表現することがあります。

カシミアタッチのミャンマー産非加熱サファイアリング サンプル

 AIGS

コーンフラワーブルーカラーと表記する鑑別機関はなかなかありませんが、

AIGSでは積極的に記載しているように感じております。

前述したロイヤルブルーカラーに比べ色調は淡いものですが、僅かな光源でも美しい発色を見せるサファイアに記載されています。

 ピジョンブラッドカラー

鳩の血を思わせる、深紅と表現して差し支えない鮮やかな赤色。

人々の目と心を惹きつけてやまない、ルビーの中で最も美しいとされる色合いがピジョンブラッドカラーになります。

ピジョンブラッドカラーについてのコラムはこちら。

 GIA

GIAはピジョンブラッドカラーに対して厳しい基準を設けています。

産地の限定、色調、透明度に蛍光性とトータルに判断しており、一定の品質が担保されています。

当店もルビーの鑑別書であればGIAをお勧めしております。

また、GIAではピジョンブラッドカラーに匹敵する美しさとしてクリムゾンレッドカラー

スカーレットレッドカラーの2種類の名称を記載することがあります。

当店ではスカーレットレッドカラーの取り扱いは今までにありませんが、

ピジョンブラッドカラーに比べ蛍光性は弱いものの高彩度でとても美しく、僅かに青色かオレンジ色が入っているかで判断されているようです。

 中央宝石研究所 DGL(ダイヤモンドグレーディングラボラトリー)

中央宝石研究所やDGL(ダイヤモンドグレーディングラボラトリー)もピジョンブラッドカラー記載の鑑別書を発行しています。

前述のロイヤルブルーカラーと同様、ピジョンブラッド(AGL基準)と記載され、一定の品質が担保されていると思って良いかと思います。

 GRS 

スイスの鑑別機関、GRSの鑑別書はオークションハウスで取り扱われる大粒ルビーにも付属していることがあり、

一定の信頼性があります。

また、GRSでは強い蛍光性を伴わないルビーもピジョンブラッドカラーとして鑑別書を発行することがあります。

こういったものは鑑別機関から見ても特別視されるほど美しい場合があり、例外として扱われています。

 ノンオイル (No indications of clarity enhancement)

業界内でノンオイルという名称で珍重されている上質なエメラルド。

これはGIAの鑑別書で No indications of clarity enhancement と記載されるものを指しております。

この基準を満たすエメラルドは少なく、通常よりも高値で取引されています。

厳密にはこのノンオイルという名称はオイル処理がされていないわけではなく、

内部のキズがオイルによってどれほど隠れているのか、という点を検査しています。

この図においては左に行くほどキズが少ないことを示しておりますが、

歴史的に価値あるエメラルドの多くは F1 Minor clarity enhancement の範囲になりますので、

当店ではF1以上のエメラルドを中心にお勧めしております。

 VIBRANT(GRS)

スイスの鑑別機関GRSでは独自の基準で美しさに言及する呼称”VIBRANT”が存在しています。

端的には暗さの少ないカラーストーンで一際鮮やかな色合いに対して記載されますが、なかなか見かけることはありません。

 ”VIBRANT”①

上記の例ですと色合いはvivid green、そこから輝きの美しさに対する”vibrant”が記載されています。

宝石は宝石種ごとに産出する原石の形が異なるため、それぞれ原石をなるべく削らないように、かつ美しく見えるよう最適化されたプロポーションがあるのですが、

こちらはあえてその原石を大きく削り出し、色の反射と輝きを最大限に引き出すよう理想的なプロポーションに整えています。

その結果モザイク模様の暗さが少なく、なかなか見られないほどに美しく仕上がっているものを”vibrant”と表現しています。

 ”VIBRANT”②

上記の”vibrant”はブラジル産パライバトルマリンやミャンマー産スピネル等に見られるモザイク模様の暗さが少ないもの、

その中で色合い、透明度ともに上質なものを指しております。

当店には数多くのカラーストーンにGRS鑑別書が付属しておりますが、”vibrant”はなかなか取得することができません。

また、パライバトルマリンはブルーを基調とするものが人気ですが、

ブラジル、オールドマインのパライバトルマリンにはグリーンベースのトップクオリティも存在しており、

まさしく”vibrant”と表現するに相応しい美しさを持ち合わせています。

 TypeⅡaダイヤモンド

無色のDカラーが最も美しいとされているダイヤモンド。

ダイヤモンドは結晶構造に窒素が含まれるのが一般的であり、

この窒素がどれほど入っているのか、そしてどのように炭素と結びついているのか、という点によって

無色なのか黄色みを帯びているのかに分かれていきます。

このDカラーのなかで窒素等の不純物をほぼ含まないダイヤモンドをType Ⅱaと分類し、

極めて高い透明度と評されるゴルコンダダイヤモンド(インド旧地名の産出地域)と同様の特徴を持つとしてレポートを発行しています。

ゴルコンダは歴史的に有名なダイヤモンドの産地であり、

この地域の上質なダイヤモンドは「水のように透明」「ロックアイスのような」といった表現をされるほど澄んでいるのが特徴です。

一般的には大粒でなければこの特徴はわかりづらいため、なかなか市場で見かけることはありません。

主に投資用やポートフォリオの選択肢として扱われることが多いダイヤモンドです。

 終わりに

当店が取り扱ったものをメインに特別な呼称をご紹介してまいりましたが、

これらは美しさを見る際の参考程度に考えるのが最も良い事例でございます。

なぜなら鑑別機関はそれぞれに基準が違い、同じ呼称が付いていても美しさには幅があるからです。

上記は二つともコロンビア産ノンオイルエメラルドリングですが、色合いの鮮やかさ、透明度ともに明確な違いがあります。

当店は上質なものだけをセレクトして仕入れを行っているのですが、それでも中には品質に違いが生まれます。

そのため特別な呼称がついていてもあまり美しいとは思わない、と感じたのであれば選択肢に入れるべきではありませんし、

特別な呼称がついていなくても美しい、と思えるものは必ずあります。

鑑別書の情報を参考にした上で、その純粋な美しさを見極めることが最も重要です。

宝石、ジュエリーをお買い求めになられる場合は実物をご覧いただき、多くの選択肢からご自身に合ったものを選ばれることを願っております。

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